東京 横浜 顔タイプメイクレッスン HARU(ハル)

『あるもの』と『ないもの』

この作品(https://www.instagram.com/sayaka.sakami_makeup/)を作るにあたり、
私は今までの価値観をゆるがす異なる感情をたくさん抱きました。


彼女は全身脱毛症です。



この世の中で髪の毛がある人の方が多数派だと思います。
そして、女性なり男性なり、髪の毛は、頭を守るものでもあり、美しさを彩るアイテムでもあると思います。


私自身ヘアメイクという仕事をしていて、ヘアデザインはその人の美しさを彩るにはとても重要なパーツだと思っていて、
どれだけメイクが完璧でもヘアがイマイチだと全部を台無しにしてしまうくらい大きなポイントだと感じていました。


今でもそれは変わりません。

でも、彼女を見た時に、
「なんて美しいんだろう」
そう思ったんです。



髪の毛がないと辛いだろうな、とか
髪の毛がない人にこんなこと言っちゃダメなんじゃないか、とか
そういう感情より先に
美しい
この美しさを私の手でも表現したい
ただそう思ってしまいました。



それは、もしかしたら髪の毛が『ない』
という少数派にあたるものを持っていたから
かもしれません。


でも、私が思うに、
その感情は、
髪の毛が「ある」「ない」
という現象以前のものだったと思っています。




彼女に初めて会った日から、彼女をモデルに作品を作りたい、
という想いを抱えながら日常を過ごしていたのですが、
彼女はモデルとしての仕事をしてるわけでもなく、
普段はウィッグをかぶって、
いわゆる『ある』多数派と同じ生活をしている人。

私の作品としてのモデルになって欲しい、
というにはあまりに唐突なんじゃないかと思い
いつかできたら声をかけてみよう、
と、作品を作ることを後回しにしようとしていました。



でも、時間を経過しても
作品にしたい、という気持ちが小さくなることはなく、
むしろどうしてもやりたくなってしまい、
気づいた時には彼女に連絡をしていました。



なぜ彼女を美しいと感じたのかよくわからないぼんやりした状態ではあったものの、
彼女の美しさを表現するには表面的な顔の構造だけじゃなくて、
彼女の中の話を聞かないと表現できない
そう思い、話を聞きにいくことから始めました。



とはいえ、私が彼女に会ったのはそれまでに1回だけ。
しかも別のお仕事のタイミングで会ったので、そこまでたくさん会話してたわけでもない関係性。


そんな人からいきなりモデルになってくれ、
というのは唐突すぎたと思うし、
よく話を聞いてくれたなと今でも思います。


私は髪の毛は『ある』し、
ヘアメイク、という仕事もしている。
髪の毛の美しさを大切にも感じている。

そんな私が
毛が『ない』ことについて、根掘り葉掘り聞くのは、
彼女の心の中を土足で足を踏み入れることになるかもしれない。
傷つけることがあるかもしれない。
話をするのは少し怖いことでもありました。

けど、核心に触れない上っ面の質問じゃ彼女の美しさを表現することは絶対にできない。

だから、
「もし、私が質問することで、傷つくことや、答えたくないことがあったら
絶対に我慢せずに言って欲しい」

そう断って話を始めました。



そんな私に対して、彼女は笑顔で
生い立ちから順に
病気の症状やその時に抱いた感情
プライベートことまで
一通り話してくれました。


1回しか会ったことのない、よくわらかない私に。




私が彼女を美しい、と感じたのは
こういうところなんだろうなって
その時に思いました。



彼女は、目の前にある「今」を
もがきながらも前に進もうとしている。


彼女の話を聞く限り、
決して最初からすんなりスムーズだったわけじゃない。


むしろ大変だったことの方が多いし、
今だってぜーんぶ前向き!!キラキラ〜!
なんてことはなく、
今もなお、日々いろんなことにもがきながら試行錯誤しながら
自身の在り方探しながら歩いている。


その自分なりにもがいているところに
彼女の美しさを感じて、私は惹かれたのかなと思っています。



そんな美しさをこの作品で表現できていたら嬉しいです。


作品は下記をご覧になっていただけますと幸いです。
https://www.instagram.com/sayaka.sakami_makeup/

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